郷土・文化
【せごどん】郷中(ごじゅう)教育ってどんなもの?鹿児島県民に聞いた「私の郷中教育」
大河ドラマ「西郷どん」盛り上がってますね~!毎週日曜日が楽しみでしかたない編集部Kです。
幼稚園児の息子は「西郷どん」が始まると
『お母さん“どん”が始まったよ~』
と教えてくれます。
「西郷どん」を観ていると、幼少期も青年期も数人で集まって学んでいる姿がよく出てきます。
「郷中(ごじゅう・ごうちゅう)教育」というキーワードも出てきましたね。
他県出身のワタクシ・・・
はて、それは何ぞや(。´・ω・)?
そんな世界。
生まれも育ちも鹿児島の夫に聞いてみると
夫「知ってるよ~、小学校のときに習ったような気がする~」
K「どんな教育?」
夫「・・・・・・(数十秒の無言タイム)“負けるな・嘘をつくな・弱いものをいじめるな”じゃない?」
K「それはつまりどういう・・・」
夫「わからん~」
(完)
いやいや(完)じゃない!何もわからんかったー!
ということで調べることにしました。
まずは図書館の本で基礎情報を
【郷中教育とは】
・郷(今でいう町内会)の仲間(=郷中)が行う学習
・薩摩藩独自の教育法
・教師なき教育。自らが教師となり生徒となる。
・起源は戦国時代の島津忠良が始めた青年育成法「日新公(じっしんこう)」で、江戸中期に郷中教育として完成
・郷(今でいう町内会)の仲間(=郷中)が行う学習
・薩摩藩独自の教育法
・教師なき教育。自らが教師となり生徒となる。
・起源は戦国時代の島津忠良が始めた青年育成法「日新公(じっしんこう)」で、江戸中期に郷中教育として完成
西郷さんがいた「下加治屋町(したかじやまち)」には、大河ドラマではセットの都合でお隣さん(実際は150メートルほど離れていたようです)の大久保利通、弟の西郷従道、大山巌、村田新八、東郷平八郎など名だたる偉人がズラリ!
みーんな、同じ郷中で学んだ先輩・後輩。
ご近所さんのほとんどが政府の重職についてる
ってことですよね・・・すごい。
なぜこんなに優秀な人材をたくさん輩出できたのか!?
この秘密が郷中教育に!
ということなんですね。
ささっ!ここからはちょっとお勉強モードでいきますよ~!ついてきて下さいね~
郷中教育の気になる中身とは?
|郷中教育を受けるのは何歳から何歳?
郷中教育を受けるのは武家の男の子。
・6~10歳は小稚児(こちご)
・11~15歳は長稚児(おさちご)
・元服した14~15歳になると二才(にせ)
と呼ばれ、25歳くらいまで郷中で学びます。
二才(にせ)は、鹿児島では今でも「かっこいい男の人」という意味で「よかにせ」って言いますよね。ドラマを見ながら、「そこからきてるのか~!」って驚きでした。
現在は「イケメン」のニュアンスが強いような気がしますが、ドラマで西郷さんのおばあちゃんが大久保さんに言った「よか、にせじゃ」は「心身ともに立派に育った良い青年」という感じがしましたね。
ちなみに西郷さんがドラマの中で「二才頭(にせがしら)」と呼ばれているのは「二才のリーダー」ということ。
年長者が年少者に教えるという独自の教育法は、リーダーの人格形成にも大きく影響を与えたと言われています。
年長者たちは年少者に教えることで自らの学びや行動を省みて、さらに高みを目指す。
特にリーダーはその傾向も強く、二才頭として評価の高かった西郷さんは役所に登用されたというわけなので、就職にもかかわるとなればやる気も出ますよね~!
|こんなときはどうする?!正確な判断が求められる「詮議」とは
勉強する内容は、古典から読み書き、武芸とさまざま。毎日、早朝から夕方までみっちり!
なかでも詮議(せんぎ)は、郷中教育を語る上では欠かせないもの。
詮議は二才たちが行った、ケーススタディ。出されたお題に対して、すぐに答えなければなりません。
お題はなかなか難しいものが多く
『殿様が急用だが早籠(はやかご)でも間に合わない。どうするか。』
といった、実際に起きたらとっても困りそう・だけど起きる可能性は十分にあるよね、という感じのもの。
正しい答はなく「そのとき自分だったらどのように行動するか」を考させ、正しい判断を素早く行う力を付けることを目的としました。
明治維新という大きな転換期を、薩摩の武士たちがスピード感をもって取り組んだようすが頭に浮かぶようです!
NHK「西郷どん」からわかる、郷中教育の大切な教え

そして郷中教育が最も大切にしている(そして我が夫が唯一覚えていた)
・負けるな
・嘘をつくな
・弱いものをいじめるな
という教え。
「負けるな」というのは、人に負けるなということより自分に負けてはいけない、勇気を持って行動しなさいという意味合いだと言われています。
これは今でも鹿児島ではよく聞く「泣こかい飛ぶぼかい、泣こよかひっ飛べ」(迷ったら決断し、実行しなさいの意味)という言葉にもよく表れている気がしますね。
「自分に負けない勇気を持ち、正しいと思ったことをすぐに判断し、迷ったらやる!」
「嘘をつくな」
「弱いものをいじめるな」
というのも、ドラマの中で農民のために一生懸命働いている西郷さんの姿を見ると、なるほどなという感じがします。
鹿児島県民に聞く!郷中教育、知ってる?の意外な答え

さて、基本情報は頭に入れたところで、気になるのは「鹿児島県民にとって
郷中教育とは?」ということ。
調査対象は、生まれも育ちも鹿児島、今は鹿児島で小学校の先生もしてるよ!な友人たち。
「郷中教育?さ~、やってないと思う」
「自分が学校で教えた記憶はないね~」
「60代の親にも聞いたけど、習ったことないって」
「社会科の副教材(鹿児島県に特化したもの)でやったような気がするけど定かじゃない」
なんとまあ、期待外れな答がズラリー!!(鹿児島県の皆様すみません)
ただ、みんなの話を聞いていると
・きちんと「郷中教育」を習ったことはないが「負けるな、嘘をつくな、弱いものをいじめるな」という教えはよどみなく言える
・「負けるな~(略)~いじめるな」と書かれた看板が学校近くに立っていた記憶があるなど、教えが身の回りに自然とあった
・「泣こかい飛ぼかい、泣こよかひっ飛べ」や「義を言うな(ヘリクツを言うな)」など郷中教育から出てきたと思われる言葉もスラスラ言える(小さい頃に親からよく言われた)
ということがわかりました。
そして、現在の学校での取り組みとしては
郷中教育として大々的にうたってはいないものの、さまざまな学年が混ざる縦割り斑での委員会活動や掃除、レクレーションなどが郷中教育の名残ではないか
とのこと。
学校教育では「郷土学習」をメインで取り扱うそうなので「その地域に特化した教育」であれば学ぶこともあるようです。
大隅なら大隅に代々伝わる文化や郷土を学ぶ、離島ならそれぞれの島や地域について学ぶ、ということ。

なので、西郷さんたちの下加治屋町があった地域(現在の加治屋町あたり)にある山下学校などでは「郷中教育」を詳しく学んでいる可能性が高い、ということでした。なるほど!
(実際に、山下小学校の校訓は「負けるな 嘘をつくな 弱いものをいじめるな」です)
郷中教育は学校教育でみっちり、小さいころから叩き込まれる・・・というわけではないものの、鹿児島県民に脈々と伝わる大切な教えであり、自然と大切にしている心構えのようなものという感じがしました。
みなさんにとっての郷中教育はどのようなものですか?
郷中教育について詳しく知らなくても、郷土の偉人たちが成し遂げた緯業に熱い思いを抱いている人は多いのではないでしょうか。
県外出身者の私ですが、大河ドラマをきっかけにますます鹿児島に興味がわきました。
そんな親に引っ張られ「どん」に興味を持ちだしたわが家のチビ薩摩隼人。彼も熱い思いを感じ始めるのかな!?楽しみです!